エンジニアのはしがき

プログラミングの日々の知見を書き連ねているブログです

「エンジニアリングマネージャーのしごと」を読了した

最近Engineering Manager(EM)というロールで日々開発を推進するようになりました。 ロールを任命された当初は右も左も分からない状態でしたが、上司から薦められた「エンジニアリングマネージャーのしごと」という書籍を読んだことで いくつか実務上の学びに繋がった点があったので記事として起こしてみました!

www.oreilly.co.jp

良かった点

具体的なアクションや方針についての記載がある

書籍の「はじめに」の章に記載があるように、仕事をこなすためのスキルについて記載があるのが特徴です。

マネージャーが直面する業務マネジメント、人材マネジメントの場面において「どう判断し行動するか」「どのように問題を咀嚼し理解に落とし込むのか」について比較的平易に書いてくれています。 マネジメント何も分からない、の状態から読んでも、読了後にはある程度の行動指針を自分の中に置いて行動できるようになりそうです。

マネージャー未経験者でも読める内容

本書はプログラマからエンジニアリングマネージャーにロールチェンジしたような方々を主にターゲット書かれています。 それ故か巷でよくある技術書を読むのに近い感覚で読むことができました。

マネジメントの分野における概念や取り得るアクションを不必要な修飾なく説明してくれており、 ポジショントーク的なエピソードも少ないことからそう感じたのかもしれません。

疑問に感じた点

16章 現代の職場環境

16章ではダイバーシティ、インクルージョンについての考え方が語られていますが、 アメリカの統計をベースに話が展開されているため日本とは少々事情が違いそうなのでその点を踏まえて読む必要がありそうでした。

ダイバーシティを推進することは革新的なイノベーションにつながる、だからマネージャーはダイバーシティを考えた行動をとっていくべきだというのが大筋の著者の意見のようです。

ただ、単なる1マネージャーが企業のダイバーシティを先導していけるのかというと、そのようなことができるのは実質的な権限を持つ上位のごく限られたマネージャーだろうと思います。 採用する従業員の性別・人種・社会的マイノリティについての方針をリードするのは、本書がターゲットとするような新米マネージャーにはかなり荷の重い内容でしょう。 この章に記載のあるアクションに関しては、役員レベルから検討し全社的に取り組んでいった方がうまく機能するのではと思いました。(各社員がダイバーシティについての価値を理解すること自体には意味があると思います)

実務に生かせた内容

3章 人間と関わる 委譲

3章では自分のタスクを相手の習熟度に合わせて委譲の度合いを調整し、委譲するという内容が記載されています。 今まで何となく抽象的に感じていた委譲について体系的にまとめてくれており頭の整理ができました。

委譲においてやってはいけないことの1つとして「ほかの人のやり方が自分と同じであることを期待すること」という記載があり、この点はかなり共感しました。 マネージャーは委譲するタスクの「説明責任」を負っているのであって「プロセス」ではないという記述が印象的でしたね。 ある程度社会人経験を積んでおり成功体験のある人ほど、プロセスに口を出したくなることって少なくはないと思うのですが マネージャーとして生きていく上では相手を信頼してプロセスは任せるというのが大事。

この辺はエンジアリングマネージャーに限らず、全業種のマネージャー業の人が理解すべき内容だなーと強く感じます(かつてのマイクロマネジメントな上司を思い出しながら…)

12章 情報の証券取引所 必要十分な情報共有するには

センシティブな情報(給与情報、メンバーのパフォーマンス、組織変革、人員削減、など)について、どれくらいの粒度で情報を公開するのが適切か、を注意深く考えて発言する(もしくは何も発言しない)ことの重要性について書かれているのが12章です。

私は新卒で入社した会社で部下の人事異動についても検討する機会があったのですが、上司から異動については現場には非公開にしておけと言われることがよくありました。 その理由を当時の私は「現場が揉める、混乱することを避けたいのだろう」と何となく直感的に理解しており、本書によってその答え合わせができました。

本書では記載のない話ですがこういった情報の取り扱いの重要性を考えると、性格的にマネージャーに向くタイプ・向かないタイプもおそらくある程度パターン化できるのだろうなと感じます。

13章 コントロールを手放す LモードとRモード

この章で人間の脳はデュアルCPUで常にどちらか一方しか稼働できないものとしてモデル化されて説明されています。 それぞれのCPUには別の特徴があり、以下のようにLモード・Rモードと定義されていました。

  • Lモード:命令を順次実行する。遅くて線形。LはLiner(線形)のこと。
  • Rモード:パターン検索とマッチングを非同期実行する。無関係に見えるものの中から関係性を見つけ出せるがコントロールはできない。RはRichのこと。

Lモードは個々の詳細の実行に必要、またRモードは新しいアイデアを思いついてイノベーションを起こすために必要。 両方のモードを併用することが重要とされていました。 Rモードは業務後にお風呂に入っていたらふと悩んでいたタスクの解決策が浮かぶ、というアレのことです。

Rモードを機能させるためにあえて「何もしない」スケジュールを設定し、思考する時間をとりましょうというアドバイスがありこれは最近試しています。 コントロールできない、というのが厄介ですが、以前よりかは俯瞰して物事を整理したり考えを抽出できているのかなという感じです。

あとがき

本書はマネージャーが遭遇するであろうタスクを網羅的に解説してくれている一方で、さらにもう1段深いレベルの技術に関しては記載がありません。 例えば1on1をスムーズに機能させるための話し方や、議論の際の適切なファシリテーションの方法については別の参考書を読んでいく必要がありそうです。