こんにちは!
仕事から帰ってくると部屋が寒い…エアコンが効くまでがツラい…そう思う時期になってきました。 せめて事前にエアコンを自宅外から操作できればいいのに…という思いから、今回は余っていたラズパイを引っ張り出して、赤外線リモコンアプリを作ってみました。
記事が長くなった為、2つに分割しています。
参考
やりたいこと
完成物
Node.jsサーバ
Reactアプリ
↓実際のReactアプリ画面
スマホやPCからアプリにアクセスし、エアコン等の家電の状態をタップして切り替えることができるようにしてます。
記事ではしっかりと紹介しきれなかったのですが、折角なので別ページにサインイン画面も用意し、Firebase Authenticationを利用してEmailとパスワードの組み合わせで認証を要求するように実装してみました。
システム構成図
大きく分けて、Node.jsサーバとReactアプリの2つで構成しています。
↓のようなフローで家電を操作していきます。
- スマホやタブレットからReactアプリでTVやエアコンなどのリモコンをON/OFF操作。
- 操作した内容をRealtimeDatabaseに反映。
- ラズパイ側では常にNode.jsサーバを稼働させておき、RealtimeDatabaseの変更を検知して、Pythonコードを実行。
- PythonコードからGPIOを操作。
- GPIOから赤外線LEDに信号を送信。
- 送信した信号がTVやエアコンなどの家電に届き、ON/OFF操作が実行される。
GPIOは、ラズパイ側からデジタル信号を入出力するためのピンのことです。ラズパイの端っこに剣山のように生えているヤツのことですね。 今回は、赤外線を送る為にGPIOからデジタル信号を発信し、自作の電子回路から家電へ赤外線を飛ばします。
物理的に必要なもの
- RasberryPi 3B+ ※ZeroWでもOKです
- 赤外線リモコン受信モジュール PL-IRM0101(38kHz)シールド付
- 5mm赤外線LED 940nm OSI5LA5113A グレー (10個入)
- LED光拡散キャップ(5mm) 青 (50個入)※任意
- ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-メス) 15cm(赤) (10本入)
- ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-メス) 15cm(青) (10本入)
- ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-メス) 15cm(黄) (10本入)
- カーボン抵抗(炭素皮膜抵抗) 1/2W 4.7kΩ (100本入)
- カーボン抵抗(炭素皮膜抵抗) 1W27Ω (100本入)
- MOSFET 2N7000
- PchパワーMOSFET(55V11A) IRFU9024NPBF
- ブレッドボード(Amazonで適当なものをお好みで購入)
- 操作したい家電製品のリモコン
↓回路用の部品はほぼ秋月電子通称で購入できます。
秋月電子通商 トップページ - 電子部品・半導体 【通販・販売】
Rasberry Pi - Node.jsサーバの実装
まずはラズパイにRaspbianをインストールし、インターネットに接続できる状態にしておきます。 (説明は省略)
ラズパイ開発環境
$ lsb_release -a No LSB modules are available. Distributor ID: Raspbian Description: Raspbian GNU/Linux 9.9 (stretch) Release: 9.9 Codename: stretch
各種インストール
まずはいわゆるおまじないですね。各パッケージを最新にしておきます。
$ sudo apt update $ sudo apt upgrade
次にGPIOを操作するライブラリ pigpio
をインストールして、起動時に自動的に有効化されるように設定しておきます。
$ sudo apt install pigpio python3-pigpio $ sudo systemctl enable pigpiod.service $ sudo systemctl start pigpiod
nodejsもインストールします。
sudo apt install nodejs
といきたいところですが、これでインストールしてしまうと古いバージョンのnode.jsが入ってしまう為、以降の処理で正しく動作しませんでした。(ここでドハマりし、数時間溶かした)
ということで、node.jsのバージョン管理ツールであるnvm
をgit経由でインストールしましょう。
$ sudo mkdir ~/.nvm $ sudo chmod 777 ~/.nvm $ git clone https://github.com/creationix/nvm.git ~/.nvm $ source ~/.nvm/nvm.sh # nvmをロード
上記を実行後に$ nvm --version
を実行して、バージョンが表示されればOKです。
このままだと、起動する毎にnvmを手動でロードする必要があるので、ブート時にnvmを自動的にロードするように設定しておきます。
$ sudo vim /etc/rc.local
# /etc/rc.local export NVM_DIR="/home/pi/.nvm" # .nvmディレクトリのパスを指定 [ -s "$NVM_DIR/nvm.sh" ] && . "$NVM_DIR/nvm.sh"
nvm経由でnode
をインストールします。
$ nvm install v12.18.3
node
と一緒にnpm
もインストールされたことを確認しておきます。
$ node -v v12.18.3 $ npm -v 6.14.6
GPIOの入出力設定を定義します。
$ crontab -e
# crontab @reboot until echo 'm 17 w w 17 0 m 18 r pud 18 u' > /dev/pigpio; do sleep 1s; done
GPIOの各ピンにはそれぞれ決まった番号が振られており、↑のコードでは「17ピンをデジタル信号の出力用、18ピンをデジタル信号の入力用として使いますよ」と定義しています。 GPIOについては↓等が参考になるかと思います。
Raspberry Pi 2/3 B ピン配置 (40ピン) - Raspberry Pi - 基礎からの IoT 入門
家電リモコンの赤外線を取得する
家電リモコンの赤外線を操作する為にはまず、リモコンのボタンを押した際に発信される赤外線の値を事前に知っておく必要があります。
そこで、irrp.py
という便利なpythonライブラリを使い、家電リモコンの赤外線を取得してみます。
まずは赤外線を受信する為に以下の電子回路を作ります。 ラズパイが起動していると、GPIOには電気が流れますので、回路とラズパイをジャンパワイヤーで繋ぐ前にラズパイの電源は切っておきましょう。
次にirrp.py
を作業用の適当な場所にDLします。
$ curl http://abyz.me.uk/rpi/pigpio/code/irrp_py.zip | zcat > irrp.py
操作したい家電のリモコンを手元に用意した状態で下記を実行します。
roomLightOn
の部分は赤外線の値に対するキーです。後でnode.jsサーバからの呼出時に使うので、リモコンのボタンに応じた分かりやすい名称を付けましょう。
$ python3 irrp.py -r -g18 -f codes roomLightOn --no-confirm --post 130
実行後は赤外線を受信するまで待機状態になるので、電子回路の赤外線リモコン受信モジュールに向けて、家電のリモコンの任意のボタンを押します。
受信が完了するとレスポンスが表示され、codes
というファイルに受信した赤外線の値が出力されます。
// codes {"roomLightOn": [1277, 428, 1277, ..., ] }
codes
の中身を見るとirrp.py
を実行した際に指定したキーと読み込んだ赤外線の値の組み合わせが出力されているはずです。
数値の配列で記述されている部分が赤外線の値です。
もし、エアコンのON/OFFを操作したい場合は、エアコンの運転ボタンと停止ボタンの赤外線信号を別々に受信してcodes
に追記していく必要があります。
受信作業が終わったら、今回組んだ電子回路は以降では不要です。
赤外線送信用の回路を組む
今度は赤外線送信をする為の電子回路を組みます。 こちらについては↓を参考に組ませてさせていただきました。
回路図
実際の回路
赤外線出力のテスト
この時点で正しく回路が動作するかターミナルからテストします。
以下はcodes
に記録したroomLightOn
というキーの赤外線を出力するコマンドです。
$ python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes roomLightOn
うまく動作すれば家電に赤外線が届き動作すると思います。 なお、操作対象の家電と回路の距離が2~3m以上離れると赤外線出力のパワー不足により届かないことがあるので、回路の置き場所を変えてみたりもしてみましょう。 赤外線LEDに「LED光拡散キャップ」を被せると赤外線の拡散方向が広がるらしいですが、私の環境ではあまり効果がありませんでした。
Node.jsサーバのコーディング
pythonでの赤外線での家電操作ができるようになりましたので、ここからは家電の状態をリアルタイムにデータベースで保持する為のプログラムを組んでいきます。
家電の状態を保持する為には、FirebaseのRealtimeDatabaseを使いますので、Firebaseのアカウント登録をし、今回のアプリ用のプロジェクトを新規作成しておきます。 (手順は公式を参照下さい)
JavaScript でのインストールと設定 | Firebase Documentation
以降のNode.jsサーバの説明は、以下のGitHubのソースを前提に説明しますので、ローカルにDLしておきます。 github.com
前の手順で作成したcodes
をmain.jsと同じ階層に配置します。GitHubのソースコードのcodesは上書きします。
Firebaseの環境変数用ファイルをローカルに作成。
touch nodeEnv.js
firebaseのAPIを利用するための各種情報を記述。
// nodeEnv.js module.exports = { apiKey: "************", authDomain: "************", databaseURL: "************", projectId: "************", storageBucket: "************", messagingSenderId: "************", }
RealtimeDatabaseを監視するメインのプログラムは↓になります。
// main.js const firebase = require("firebase"); const exec = require("child_process").exec; const nodeEnv = require('./nodeEnv.js'); console.log(nodeEnv); // firebase init const firebaseConfig = { apiKey: nodeEnv.apiKey, authDomain: nodeEnv.authDomain, databaseURL: nodeEnv.databaseURL, projectId: nodeEnv.projectId, storageBucket: nodeEnv.storageBucket, messagingSenderId: nodeEnv.messagingSenderId, }; firebase.initializeApp(firebaseConfig); // DB参照を準備 const powerRef = firebase.database().ref().child('airconPower'); const bedroomLightRef = firebase.database().ref().child('bedroomLight'); const diningLightRef = firebase.database().ref().child('diningLight'); const tvRef = firebase.database().ref().child('tv'); let command; // エアコンON/OFF powerRef.on("value", function(snapshot){ switch(snapshot.val()) { case null: console.log('error: snapshot.val() is null...<(+p+)>'); break; case 'cool': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes coolairOn"; break; case 'hot': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes hotairOn"; break; default: command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes powerOff"; break; } exec(command, function(err, stdout, stderr){ console.log('execute => ' + command); if(!err) { console.log("stdout: " + stdout); console.log("stderr: " + stderr); } else { console.log(err); } }); }); // 寝室ライト bedroomLightRef.on("value", function(snapshot){ switch(snapshot.val()) { case null: console.log('error: snapshot.val() is null...<(+p+)>'); break; case 'on': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes bedroomLightOn"; break; case 'off': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes bedroomLightOff"; break; default: console.log('error: snapshot.val() is invalid value...<(+p+)>'); break; } exec(command, function(err, stdout, stderr){ console.log('execute => ' + command); if(!err) { console.log("stdout: " + stdout); console.log("stderr: " + stderr); } else { console.log(err); } }); }); // ダイニングライト diningLightRef.on("value", function(snapshot){ switch(snapshot.val()) { case null: console.log('error: snapshot.val() is null...<(+p+)>'); break; case 'on': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes diningLightOn"; break; case 'off': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes diningLightOff"; break; default: console.log('error: snapshot.val() is invalid value...<(+p+)>'); break; } exec(command, function(err, stdout, stderr){ console.log('execute => ' + command); if(!err) { console.log("stdout: " + stdout); console.log("stderr: " + stderr); } else { console.log(err); } }); }); // TV tvRef.on("value", function(snapshot){ switch(snapshot.val()) { case null: console.log('error: snapshot.val() is null...<(+p+)>'); break; case 'on': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes tvOn"; break; case 'off': command = "python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes tvOff"; break; default: console.log('error: snapshot.val() is invalid value...<(+p+)>'); break; } exec(command, function(err, stdout, stderr){ console.log('execute => ' + command); if(!err) { console.log("stdout: " + stdout); console.log("stderr: " + stderr); } else { console.log(err); } }); });
Node.jsサーバ用のjsファイルでは、Realtime Databaseとリアルタイムに同期させ、各家電の状態を示す値を監視させます。
値が変わったことをトリガーに赤外線発信をするirrp.py
を実行させています。
例えば下記の
"python3 /home/pi/webcon-node/irrp.py -p -g17 -f /home/pi/webcon-node/codes coolairOn"
のコマンドは、「codes
ファイル内のcoolairOn
というキーの赤外線の値をGPIOの17ピン(出力用)から発信する」という意味を示しています。
操作したい家電によってソースは適宜変えて下さい。
さて、以上でNode.jsサーバが出来ましたので、テストしてみます。
$ node /home/pi/webcon-node/main.js
上記コマンドでNode.jsサーバを立ち上げた状態で、FirebaseコンソールからRealtimeDatabaseの値を変えてみて、うまく家電が動けばOKです。 動作しない場合、ソースコード以外に電子回路の組み方を間違っていないか確認すると解決するかもしれません。 実際、電子回路は素人なので私もよく間違えました…。
Node.jsサーバを常駐させる
毎回ブート時に手動でNode.jsサーバを起動するのは現実的ではありませんので、常駐させます。
npmパッケージであるforever
を使います。
forever
はnodeアプリがエラーで落ちたりした場合に自動的に再起動をしてくれます。
$ sudo npm install -g forever
ブート時にforeverでNode.jsサーバを起動し常駐させます。 rc.localからコードを実行する際は、フルパス指定しないと正しく動作しないので注意。
$ sudo nano /etc/rc.local
# rc.local /usr/bin/forever start -o /home/pi/webcon-node/stdout.log -e /home/pi/webcon-node/stderr.log /home/pi/webcon-node/main.js
ここまでで赤外線発信をするサーバを作ることができました。 次の記事はもっと人間が気楽にRealtime Databaseを操作できるよう、webアプリを作っていきます! 一息ついて次に行きましょう。